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灰汁、アク

あく

 灰汁(あく)とは、灰を水に溶かしたときの上澄みのことで、アルカリや炭酸を多く含み、食品の臭み取りや衣類の染色、洗濯などに使う。また食品では、野菜や山菜に含まれる苦味成分や肉類の煮物料理で水面に浮かぶ泡状の濁った成分もアクと言う。野菜や山菜の場合、アクの成分は苦味が強いので(特に山菜)灰汁と共通点があるが、煮物料理の場合、水面に浮かんだものという類似点はあるものの、灰を溶かした水に浮かぶ灰汁は「上澄み」というくらいで澄んだ液体であるから見た目は正反対だし、灰汁は食品の臭み取り(アク抜き)にも使われたので、これまた正反対の意味あいで使用されていることになる。灰汁としては、そんな使用法に残念な思いをしているに違いない。それもこれも「灰汁」が、「悪」につながる「アク」などという名称がついているせいで、食品の苦味やえぐみを悪いものと自動的に考える習慣がついているからではないかと考える。しかし「アク」は漢語の「悪(呉音でアク)」から来ているのではなさそうで(なぜなら、漢字輸入以前からその語はあったに違いないから)、語源は明らかではないが、地方で使われていた灰やゴミを意味する語から変化したのではないかという説が見られる(やはり捨てるもんじゃねえか、という話だが……)。

 ところで日本料理では、煮物のアクはせっせと取り除かれるが、フランス料理などでスープストックを取るときに浮かぶアクは、うまみ成分のひとつと考えて取り除かず、スープの中にぐいぐい(擬態語の選択に問題あり)戻すのだそうだ。ここに日本料理と他の料理との考え方の差が見てとれる。フランス料理などは、うまい成分であれば見た目もばっちいアクも利用する(取り除くのがめんどくさいだけだと私は思うが)。一方日本料理は、それがうま味であっても、狙った味以外のうま味であれば取り除いて捨てる(見た目が悪いから捨てているだけとも思えるが)。日本料理の大御所が口にする「足し算の料理と引き算の料理の違い」という例えはこんなところにも表れているのではなかろうか。

 アクの件でわかりやすい例をあげると、とんこつラーメンの臭みは日本人にとっては「アク」だが、海外の人々にとってはうま味のひとつなので一番人気がある。中華のラーメンやしょうゆラーメンなどは同じとんこつを使っても、きれいに洗って雑味成分を取り除いているので、アクは感じられない。もっとも日本人だって、「馬刺しは血の味がするくらいのほうがうまい」などというバカ舌もいるし(私のことです)、とんこつラーメンはどんなにくさくてもかなり人気があるので、「アク」のうま味に気付いている食通もいる(バカ舌じゃなかったんかい)ということだ。

(KAGAMI & Co.)

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