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吸いもの、吸い物

すいもの

 吸いもの(吸い物)とは、日本料理の汁物のことだが、「永谷園の松茸のお吸いもの」のせいで(か、どうかは知らないが)、一般的には、高級感のある(なんせマツタケ入ってますから)すまし汁を言い(永谷園のお吸い物はお手頃価格です)、われわれ庶民が毎日のように口にしている味噌汁と対比される。しかし、懐石料理などで味噌仕立ての汁椀が出たとしても「吸いもの」であり、味噌汁とはいわないように、必ずしもすまし汁=吸いものではない。懐石料理のような本格的な日本料理で提供される個々の料理は、大半が日本酒に合わせて作られており、吸いものも例外ではなく、早い話が酒の肴である。酒を楽しむための料理であるから、濃い味の味噌汁などが敬遠され、すまし汁が主となっているとのことだが、椀もののたれなどは濃い味のものが多いので、ただ単に、庶民の調味料である味噌をそのまま溶かしたような料理は作りたくないだけではないかと私などは思う。たいして味も付いてないのに吸いものに高級なイメージがあるのも、バカ高い日本料理で提供されるからで、そのイメージを壊さないために永谷園のお吸いものにも、どうにか目視できる程度のマツタケが入っているのである。

 ところで「吸いもの」は吸って飲むものという意味だが、海外で飲み物を吸って飲むのは、ストローがさしてある冷たい飲み物くらいで、普通の飲み物はスプーンなどを使って口中に流し込む。日本では、飲み物を飲む場合、スプーンのような器具を使わず、食器を直接口につけて飲む。この場合、流し込むようにして飲もうとすると、熱い汁を一気に飲み込んでしまったり、口からあふれてしまったりするので、「吸い」ながら量を調整する必要がある。この習慣が、液体ばかりでなく、麵類などの個体にも応用されて、ソバやラーメンをすする食文化が生まれたに違いない。日本の米が粘りけ強く炊かれるのも、さらさらにすると、みんな吸い込むようにご飯を食べてしまうからかもしれない(そんなこたーない)。(KAGAMI & Co.)

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