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惻隠の情

そくいんのじょう

 惻隠の情とは、他人に同情する気持ち、人をあわれむ心。「惻」も「隠」も悲しむ、心痛む、哀れに思う、という意味。『孟子』によると、惻隠の心はだれにでもあり、それを拡充していけば、孔子の理想とする「仁(他人に対する親愛の情)」につながるとする。

「惻隠」「惻隠の情」は近年あまり聞かれなくなった言葉である。一方で、同様に漢字を見ただけでは意味のよくわからない「忸怩(じくじ)たる思い」「慚愧(ざんき)に堪えない」(いずれも「とても恥ずかしい」という意味)といった言葉はときどき耳にする。こうした漢語的表現は、自分のホンネを隠したいときに用いられがちで、政治家が仲間の不祥事の感想を聞かれたときなどによく使う。かたや「惻隠」は、みんなにわかってほしい気持ちなので、「深く同情します」「とてもかわいそうですね」とわかりやすく言い表せばよいのであって、わざわざ「惻隠の情を禁じえません」などとわけわからなくする必要はないのである。(KAGAMI & Co.)

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