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ずるずる

ずるずる

 ずるずるとは、重いものや衣類をだらしなく引きずったり、音を立てて汁を吸い込むさまなどを表す擬音語。汁を吸い込ったり、ソバをすする動作を「すする」というが、音としては「ずるずる」と表すので、ほんとうは「ずずる」と言ったほうがいいのでは……との意見は「すする」の項目を参照(ソバの場合は「つるつる」とも言うので、「つつる」でもいいかも)。ものを引きずる「ずるずる」は、「するする」が変化した語だとされている。「するする」は、ものが滑らかにすべるさまを表現するので、なめらかではなく摩擦抵抗が大きいところをすべらす場合は「ずるずる」になる。

「ずるずる」の「ず」音は歯茎破裂音または歯茎摩擦音の子音[z]と、後舌の狭母音[u]で構成される、「するする」の「す」音は歯茎摩擦音の[s]であり、「摩擦音」とは言っても、歯茎と舌の間の細い透き間を空気を通し、その空気の摩擦で音を発する。したがって「するする」は、ものとものとが多少摩擦はするものの、非常にスムースに移動する様子を表す。[z]は歯茎破裂音または歯茎摩擦音と言っているように、[s]と同じ方法で発することもあるが、基本は舌と歯茎を密着させそれを勢いよく破裂させて発音する音なので、[s]より強い摩擦が生じ、重いものや表面がなめらかでないものを引きずる音に適した表現となる。なお「ずるずる」の「る」のほうは、ラ行の音を語尾に持つ擬音、擬態語「つるつる」「ころころ」「さらさら」「くるくる」「ひらひら」「ぺらぺら」などと同じく、江戸っ子の巻き舌のように、比較的速く、気持ちよく、ものが連続して回転したり、移動したりする様子を表す。「するする」は「つるつる」などと同様、摩擦抵抗が少なく速く気持ちよくものが移動するが、「ず」で抵抗が大きくなる「ずるずる」は、移動はするが重かったりすべりが悪かったりして、「するする」より速さや気持ちよさが薄れることになる。重いものを引きずる場合、実際「ずるずる」に近い音が聞こえるが、軽い衣類を引きずる場合はそんな音はしないし、むしろ「するする」に近い。しかし、それを「するする」と言わないのは、表面がなめらかでない衣であることと、着物を引きずって歩くだらしなさ(気持ちのよくない姿)を表すのに適した表現だからと考える。

 日本語の擬音語、擬態語は、その言葉を聞いて気持ちいいか悪いかという感覚が非常に大きな要素を占めていると筆者は考えるしだいである。(VP KAGAMI)

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