top of page

すこぶる、頗る

すこぶる

 すこぶる(頗る)とは、非常に、甚だしくという意味。「すこぶる健康」などと使うが、やや古めかしい言い方で、今風に言いかえれば「すっごく健康」「超健康」といったところ。しかしこの語の初期(平安時代頃から)の使い方では、やや、少し、ちょっとという意味が優勢で、江戸初期の『日葡辞書』でも「少し、ほんの」と訳されている。なぜこういうことになっているかというと、その容疑者は漢字の「頗」。この字は、人の姿勢が一方に傾いていることを表していて、一方向に偏っている、というのが本意。つまり、多い方にも少ない方にも、良い方にも悪い方にも偏っているのが「頗」ということになる。日本ではこの字を訓読するのに「すこぶる」と当てたが、「すこ」は「少し」の「すこ」で、「ぶる」は「ひたぶる」「高ぶる」のように一方向に強度を増す意の接尾語と考えられる。おそらく最初に日本に持ち込まれた漢文の「頗」の意味が「やや」とか「少し」だったので「すこ」を当てたのだと思うが、もしかしたら、逆の「非常に」「甚だしく」という意味で使われている文章もあったので、程度がはなはだしいことを伝える「ぶる」を加えてみました、みたいな事情があったのかもしれない。中国語でも「頗」は、古くから「やや「少し」という意味でも「非常に」「甚だしく」という意味でも使われているが、いまでは後者の意が主であるようだ。大げさな物言いが好きな中国人のことだから、傾いているものを見て「少しってこたあねえ、だいぶと傾いてるじゃねえか」(なんで江戸っ子になるのかわからないが)という気分をこの字に乗せたかったのではないだろうか(違うか)。

 ところで、「すこぶる」と聞いて、明治から大正期に活躍したジャーナリスト宮武外骨が出版した雑誌『スコブル』を思い浮かべた人は、重度のヘンなもの好き症候群である。

​(VP KAGAMI)

関連用語

bottom of page