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よだれ鶏、口水鶏

よだれどり

 よだれ鶏とは、中国・四川料理の一品で、ゆでた鶏に四川料理独特のスパイスが効いた酢醤油たれをかけたもの。ゆでた鶏だから要するにだしがらであり、ゆでたあと煮汁や酒などに漬け込んで味をもどすという丁寧な作り方をしている料理店もあるようだが、そこそこ味気ない肉に、こてこてのソースで味付けしたという、大阪のB級グルメみたいな料理であるものの(自分で言っていながらよく意味がわからないが)、ビールに合うという飲みスケの意見も後押しして、近年、日本の中国料理界ではちょっとしたブームになっている。

「よだれ鶏」とは、なんだかだらしない名前だが、見ただけでよだれが止まらず、好物を前にしてお預けをくらったラブラドールレトリバー状態になるところから名づけられたようで、中国語「口水鶏」の訳。つまり中国語では「よだれ」は「口水」なわけで、口の水とはまったくおっしゃるとおりだが、食欲をイメージするにはいまいちな命名である。この「口水」は、よだれではなくツバつまり「唾液」の表現にはぴったりで、中国語でも唾液を「口水」と言うこともあるようなので、「口水鶏」は「つばき鶏」と訳されてもよかったのかもしれない。そうなるとこの料理は口の中にツバが湧くどまりの料理ということになりそうだし、「つばき鶏」ではどうにも食欲がわかない。もっとも、漢字の「涎」は口から垂れる水を表しており、よだれも「涎水」という言い方があるようで、「涎水鶏」のほうがこの料理にはふさわしいような気がするが、中国人にアドバイスしても聞いてはもらえないだろう。

(KAGAMI & Co.)

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