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いただきます、頂きます

いただきます

 いただきます(頂きます)とは、日本人の食前の挨拶であり、英語になおせば“I’ll take it”“I’ll have it”(これから食べるよ)と言っているのだが、ぶしつけな英語民族と決定的に違うのは、「いただく」が目上の者からものをもらうときに使う謙譲語であるということ。つまり、貴重なものをもらいとてもありがたい、という感謝の気持ちがその言葉には含まれているのである。このようになにごとにも礼儀正しい日本人ではあるが、英語民族でも、熱心なキリスト教徒は食事の前に神への感謝の言葉を長々と述べているようだから、そんな人々に比べると、「いただきます」のひとことで済ませてご飯や味噌汁がさめないうちにさっさと食べ始める日本人は、どんだけコンビニエントな(お調子のいい)民族かと言えなくもない。

 現代では、「いただきます」と声にすることで食材を提供してくれた農民や漁師、あるいは調理してくれた人に感謝しているのだなどと、泣かせる解釈がほどこされているが、本来は、神前に供えた食べ物を下ろして食べるさいに神に感謝したり、お呼ばれの食事で亭主に感謝して発した言葉であって、農民や調理者に感謝していたわけではないと思われる。とはいえ、「いただきます」というだけでは「誰に対して言っているのかわからない」というあいまいさのおかげで、都合よく解釈して現代でも十分通用しているというところが、日本語のフレキシブルな一面を表している。(KAGAMI & Co.)

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