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情け、なさけ

なさけ

 情け(なさけ)とは、他者へのあわれみの心、恩情、同情。「情けをかける」のように、不幸な境遇の他者を見過ごせず(結果的に見過ごしたとしても)、助けてあげたい(結果的に助けてあげなかったとしても)と思う気持ちをいう。つまり「同情するなら金をくれ」の、いままさに実行に移すかどうか(金をあげるかあげないか)というときの心の状態をいう。「情」という漢字が当てられているように(というか、「情」に「なさけ」という和語を当てた)、本来は人間の感情、人間としてあるべき感情、その中でも人間をいった。

「なさけ」の語源については、ほとんどダジャレ大会のような諸説がいりみだれているが、大野晋先生の「為す(なす)」の名詞形に、「悲しげ」など見た目の形をいう接尾語「げ」がついたものとする説がいちばんまともに思える。つまり「なさげ」がもとの形だというわけだが、最近「元気なさげ」などと使われる、「無し」がもとになった「無さげ」とは違う。「為す」は行為を行う、やりとげるという意味なので、「為さげ(なさげ)」は「何かしたいみたいな感じ~」「何かしてあげたいみたいな感じ~」という意味になる。つまり「なさけ」は、単なる人間の感情ではなく、他者へ働きかけようとする感情を意味していると考えられ、現在の使い方は適切だといえる。

​(VP KAGAMI)

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