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安い、易い

やすい

 安いとは、低価格であるという意味。「易い」という漢字を使うと、簡単で手間がかからない、簡単にその傾向に陥るという意味になる。「易い」と単独で使われるのは「案ずるより産むが易し」のような古めかしいことわざくらいで、主に「しやすい」「走りやすい」「間違えやすい」のように、用言の後に付く語として多用される。 「やすい」は意外なことに、休息するという意味の「休む」と同源であるとされる。『岩波古語辞典』によると、「休む」は、物事の成行きについて、気を楽にして事の進行を一時止めるという意。「やすし(易し、安し)」は、物事の成行きについて、責任や困難がなく気が楽である意とある。つまり「気を楽にして、リラックスして…」というところが両者の共通点であり、リラックスすることそのものが「休む」、リラックスして取り組めるのが「易い」、リラックスして購入できるのが「安い」(そりゃそうだ、ティファニーに入店したときみたいに、100均で緊張するヤツはいない)となる。「安」と「易」を重ねた「安易」などという語は。リラックスしすぎているわけで、「安易な行動はつつしめ!」とお怒りを受けることになるのも当然だ。

 漢字の「安」は、霊廟を表す「宀」に「女」の組み合せで、儀式の執行を表しているらしい(巫女さんがなんかやってるんでしょうね)。そこから、神様や先祖の霊を鎮めて安らかにさせるという意味合いが生じる。「易」の方は、占いの「易」があるくらいでやはり宗教的な語源かと思いきや、「交易」「貿易」に使われている「交換する」という意味が本来らしい。一説には、この「易」はカメレオンの形を表していて、体の色が変化するところから、取り替える、交換するという意味が生まれたのだという。取り替えるという意味が、簡単で手間がかからないという意味に発展した経緯はもう少し研究してみないとわからないが(あまり研究する気もないけど)、カメレオン説をとるなら、 カメレオンがひょいひょい体の色を簡単に変えるところから……なんて説もおそるおそる提案できそうだ。

 ところで。カメレオン説もいいが、そんな動物が漢字が成立したころの中国にいたのかという話だが、カメレオンの生息地はインドあたりが東端のようで中国にはお邪魔していそうにない。しかし珍しい動物であるから、シルクロードを渡って中国にもたらされたとも考えられ、想像をめぐらせると「易」という字にもロマンを感じてしまうのである(感じませんかね)。

(KAGAMI & Co.)

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