top of page

杮落とし、こけら落とし

こけらおとし

 柿落し(こけら落とし)とは、新築または改築された劇場での初興行のこと。柿(こけら)は木くずのことで、劇場などの建物の工事が終わると屋根や足場から木くずを落としたことから、新しい劇場のお披露目を言うようになったものらしい。ただし歌舞伎の専門家筋は、いかにもこじつけめいたその説を疑っている。「こけら」はまた、こけら葺きというように、屋根を葺く木の薄板をもいう。しかしそれだと「こけら落とし」は、地震で屋根材がバラバラ落ちてくるみたいで縁起が悪く、おめでたい興行にはふさわしくない。

「柿(こけら)」は「柿(かき)」と同じ字だが、もとは「𣏕」と書き、「柹」と書いた柿(かき)とは別字。「𣏕」は、木のけずりくず、木片、また、屋根材に使用する木の薄板をいう。「「𣏕」(こけら)」のほうが「柿」の字形に近いので、なぜ「柹」を「柿」にしたのか疑問だが、篆書体で書かれた中国最古の部首別漢字字典『説文解字』には、「柿」と似た形の字体が書かれており、「柹」はその字の別体であり、「柿」は本家を手本にした文字だと考えられる。とまあ、どうでもよい考察だが、屋根材の「こけら」に柿の木が使用されていそうもないので、果物の「柿(かき)」と木片の「柿(こけら)」とは同姓同名だが縁もゆかりもない他人だといえそうだ。

​(VP KAGAMI)

関連用語

bottom of page