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未練

みれん

 未練とは、あきらめきれないこと、その感情のことで、特に男女関係について言う場合が多い。つまり、捨てられた男が長い間持ち続け、捨てられた女がしばらくの間持つ感情である。

 未練の「練」は、「熟練」や「練達」の「練」で、ものごとに習熟していることを言う。「未練」は「未(いま)だ練れず」と読み下すように、本来は「未熟なこと」を意味した。1603年に刊行された日本語−ポルトガル語の辞典『日葡辞書』には、「Miren」は「臆病」の意とあり、「この語の本来の意味は、軽々しさ、軽薄さということであって、すぐに飛びかかったり、腹を立てたりするけれども、肝心の時になると、へまをしたり、気力をなくしたり、逃げ出したりするような人について言う語」と説明が続く(『邦訳日葡辞書/岩波書店』による。Mirenな性格について、そこまでていねいに説明しなくても……と、思わず笑える解説である)。つまり未練(Miren)は、未熟な人間の性格を言ったものであろう。

 一方、「あきらめきれないこと」の意味でも「未練」は、近世以前にすでに使われていた。仏教で修業が未熟であることを「未練」と言っていたので、「俗世間をあきらめきれないこと」に結びついたのではないかと推測する(注:私見です)。男女関係を忘れられないことを中国語では「依恋」とか「留恋」と言うようで、「恋」に心が依存したり留まったりして忘れられないという感情を表現しているのだろう。日本の「未練」は、「練」が、恋愛の「恋」とシンクロして、現在の「男女関係をあきらめきれない」意味が強くなったのではないかとも考えられる(注:これまた私見です)。(KAGAMI & Co.)

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