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山笑う

やまわらう

 山笑うとは、俳句の春の季語。春になって芽吹き始めた草木で山々がうっすらと色づく様子を「笑う」と表現したもの。句会でこの季語を使ってかっこつけたい人は、旧仮名遣いで「山笑ふ」としよう(もっとも、他の部分がちゃんと旧仮名遣いになっていないとずっこける)。

 「山笑う」は、多分に観念的な比喩で、即物的、感覚的な俳句にそぐわないせいか、ほとんど枕詞同然の扱いを受け、この季語を使った名句は皆無である(と言い切っていいか、自信はないですが)。

 こういう観念的な例えは中国人が得意であり、北宋の画家・郭熙(かくき)の言葉を息子の郭思(かくし)がまとめた『林泉高致集』の「山水訓」に「春山澹冶而如笑夏山蒼翠而如滴秋山明浄而如化粧冬山惨淡而如睡。(春山澹冶〈たんや〉にして笑うが如く、夏山蒼翠〈そうすい〉にして滴るが如く、秋山明浄〈めいじょう〉にして化粧(よそお)うが如く、冬山惨淡〈さんたん〉として眠るが如し)」とあるのが原典で、日本では、南宋の儒学者・呂祖謙が山水に関する古今の名文を集めた文集『臥遊録』で郭熙の言葉を引用、紹介したものが知られている。この文で春山を表現する「澹冶(たんや)」は「淡冶」に同じ。「冶」(扁は「さんずい」ではなく「にすい」)は、「冶金(やきん)」と使うように金属を精錬する意で、他になめかしい、艶やかなどの意味があり、「淡冶」は淡く艶めくということ。要するに、「むすめっ子がちっとばかし色気づいた」というイメージではないかと思われる。そうすると、「山笑う」の「笑う」も、ゲラゲラ大笑いする笑いではなく、男を誘うような微笑であることがうかがわれる。桜の花が満開だったら「笑う」も当たらずとも遠からずだが、そういうことを言っているわけではないらしいので、日本人の多くは「山が笑うって、どうよ」と感覚的に疑問をいだき、あまり俳句に使う気にはなれないのだと思われる。

 なお、この語の出典については、ネットの情報はもちろんのこと、権威ある辞書でも言っていることがバラバラである。この項に書かれていることは、『臥遊録』の原文や中国、台湾のネット情報なども調べたうえで掲載しているので、かなり正しい情報である(と言い切る自信はないですが)。(KAGAMI & Co.)

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