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タケノコ、筍、笋

たけのこ

 タケノコ(竹の子、筍、笋)とは、竹の地下茎から生じた若芽。「竹の子ども」というわかりやすい語源だが、「キノコ(木の子)」がほんとうの木の子どもではないのに対して(「養子」「隠し子」とも言い難く、せいぜい「木についた虫」か?)、タケノコは実子。しかし、キノコにしてもタケノコにしても、わざわざ「子ども」としてはなばなしく紹介しているのは、それを「食べる」から。日本で最も多い孟宗竹は、晩春から初夏にかけて地面に顔を出したころに掘って食べる。俳句では夏(初夏)の季語である。

 タケノコを好んで食べるのは中国と日本くらいらしい。欧米には竹そのものが自生しないので無理もないが、タケノコは収穫した直後からえぐ味が増すので、早いうちにアク抜きなどの処理が必要となり、食べ物に対する執着の強さを中国と日本は示しているのかもしれない(日本人はフグの卵巣は食べるけど、コウモリなんか食べないけどね)。

 中国では、唐代の朝廷には竹林を管理して毎年タケノコを食膳に上す官職があったそうで、日本でも古くから親しまれていた。『源氏物語/横笛』には幼い薫の君(表向きは光源氏の次男)がタケノコを食べるシーンが出てくる。そのかわいらしい姿を見た祖父(これも表向き)の朱雀院が「憂き節も忘れずながら呉竹(くれたけ)のこは捨て難きものにぞありける(いやな時のことは忘れられないが、この子は捨てがたく忘れがたいものである)」と歌を詠んだ。この「呉竹」は淡竹(はちく)と呼ばれる竹の種類で、味は孟宗竹に劣るようだが、ここではたぶん「忘れずながら暮れる(忘れられないまま過ぎていく)」と掛かっている「くれ竹」を持ち出したのであって、実際にその種のタケノコを食べたかどうかはわからない(小説だからどっちにしても「ウソ」だけどね)。(KAGAMI & Co.)

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