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暗い[慣用語]

くらい

 暗いとは光の量が少ないという意味だが、慣用表現としては、「暗い性格」のように陰気で明朗ではない、「暗い世の中」のように悲惨な事件などで人々の気分が沈んでいる、「先行きが暗い」のように将来に希望が持てない、「歌道に暗い」のように詳しくない、よく知らない、などの使い方をされる。いずれも光が少ないために、明朗でない、先が見えない、気分が沈む、詳しいところまで知らない、といった感覚的なとらえかたから来ている。

 ある評論家が雑誌に経済論文を寄稿したところ、編集者から「もっと暗いタイトルにしてもらえませんかね」とお願いされたという。どうやら、雑誌の購読者はイケイケの明るいタイトルより、お先真っ暗みたいな暗いタイトルに食いつくので、部数が稼げるのだそうだ。確かに政治、経済などのお固い雑誌の広告を見ると「日本経済がヤバい」だの「この国の若者には未来がない」といった暗い見通しのタイトルが多い。また、そういう記事を書いたり、険しい顔をしてテレビで発言したほうがなんとなく知的に見えるという面があるようだ。陽気なことばかり言っている人物は、その発言内容が正しいか間違っているかに関わらず、おバカに見える傾向もある。さらに、暗い予想のほうが、当たったときに称讃されやすいことも確かで、「GDP劇的回復」なんて予想は「そんなん希望的観測が当たっただけだろ」とバカにされたりする。

 日本人はそんな暗い予想に基づいて現在を設計する傾向が強く、出費や投資を控えがちであり、個人も企業も、さらには政府までが、資産は貯め込むがケチケチして使わないという独特のデフレ社会を作っている。日本人に保険加入者が多いのはそのあらわれともいえる(昔は、保険のおばさんがゴリゴリ押してくるので入らされたという人も多いが)。(VP KAGAMI)

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