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冷やし中華
ひやしちゅうか
冷やし中華とは、直訳してしまえば「冷やした中華料理」というようなことになるのだろうが、決して冷凍ギョーザや冷凍シューマイを言うわけではなく、おそらく「冷やし中華そば」の略であり、その実態は、うどん屋に言わせれば「ぶっかけラーメン」である。茹でて冷水で締めた中華麺の上に、細切りのハム、チャーシュー、卵焼き(錦糸卵)、キュウリ、トマトなどを放射状に並べ、酢醤油のタレをかけたスタイルが最も一般的で、中華料理店や一部のラーメン屋の店先に「冷やし中華はじめました」という張り紙が出されるのが、初夏の風物詩ともなっている。
このように冷やし中華は夏季限定商品として販売されるのが普通で、中華料理店やラーメン屋の主力メニューにはなっていない。というのは、王道の冷やし中華はかけ汁がシンプルすぎて(それでもうまいから)バリエーションがほとんどなく、マニアックな料理人やラーメン店主の研究対象になりにくいからだと考える。また、店で出しているものとコンビニで売っているものの差がほとんど感じられない(バカ舌の筆者の意見です)点なども、冷やし中華に人生をささげる変人が現れない原因ともなっている。漫才師のミルクボーイに言わせれば、「それに人生かけてる料理人がおるらしいんよ」「ほな、冷やし中華と違うか。冷やし中華に人生かけてる料理人なんかおらんのよ」ということになる。本格的な中華料理店では、細切りの鶏肉にごまだれをかけたタイプ(こちらのほうが中国の本家に近いらしい)がメニューに乗るが、バカシンプルな酢醤油タイプの冷やし中華の牙城を崩すにはいたっていない。日本ではなぜ、中国の涼拌麺ではなく、酢醤油の冷やし中華が定番料理になったかというと、中国は冷たい料理は体に悪いという考えがあるので、「涼」とはうたっていてもしょせん生暖かい料理であり、そこそこ冷えていてさっぱり食える冷やし中華にはかなわなかったということであろう。
その「冷やし中華はじめました」のは、神田神保町の揚子江菜館だということになっており、現在も五色涼拌麺(ごしょくりゃんばんめん)の名で王道の冷やし中華(豪華に盛り上がっていて、そのへんの街中華とは差別化しているが)を出している。昭和初期に二代目のオーナーが、上海の涼拌麺を参考にして開発したのだそうだ。仙台の龍亭という店も、同じころに似たような中華そばを売り出したようで、元祖を名乗っているが、お隣の岩手の冷麺のようにご当地名物になるまでには至っていない(全国に広がりすぎちゃいましたね)。
(KAGAMI & Co.)
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