手掴み、手づかみ

​てづかみ

 手掴み(手づかみ)とは、手でものをつかむこと。足でものを器用につかめる人はあまりいないので、ちょっと考えると当たり前の言葉のように感じられるが、ここで「手」と比較されているのは「足」ではなく、手の替わりをする「道具」。例えば「箸」を用いずに手で焼きそばを食べれば「手づかみで焼きそばを食べた」となり、「捕獲棒」を用いずにヘビを捕獲すれば「手づかみでヘビを捕まえた」ということになる。つまり、普通は「道具」を使うのに、「手でつかんでやがる!」という光景が周囲の人々にショックを与えるので、こういう言葉が生まれたのである。

 手づかみでものを食べるのはマナーに反するとか、衛生的でないと言われ、子どもは叱責される。しかし、寿司など職人が手で作っている食べ物は、衛生がどうのこうの言っていたらとても食えないし、客の方も手で食べるのが本来のマナーだともされる。また、パンや菓子のように手のほうが食べやすい(というか、それを食べるための道具を作るのもめんどい)ものもある。一方、鍋料理とかビーフシチューなどは、熱いわ、すくえないわ、食卓に垂れるわ、服は汚れるわで、とても手では食べられない料理もあり(カレーは発祥の地では手で器用に食べられているようだが)、食べ物はそれぞれに適した食具で食べればよいのであって、「手づかみ=マナー違反」と簡単に片付けるわけにはいかない。しかしまあ、子どもに手づかみを許していたら、手は汚れるわ、服にシミを作るわ、食卓から床にまで汁が垂れるわ、犬がやってきて床をしゃぶるわ、兄弟げんかで食べ物の投げ合いが始まるわで、収集がつかなくなるので、寿司屋に行って通ぶって手づかみで寿司を食える年齢になるまで、「手づかみ禁止」を言い渡すのも教育上は有効だとも言えそうだ。

 イギリスに“Fingers were made before forks(指はフォークより前に作られた)”ということわざがあり、子どもが手づかみでものを食べて親に叱られたとき、言い訳として使う。こう言われると親は、「一本とられた」というような顔をして、叱ったことをわびるのだという。こうした日常のへりくつのやりとりがイギリス人の皮肉な性格を形成し、またウソくさい小芝居の積み重ねがシェークスピアの演劇を生み出したのではないかと推察する(違うでしょうけれども)。(KAGAMI & Co.)

関連用語

講談社より『笑える日本語辞典』発売中! 

書店、ネット書店等でお求めください。

定価1.000円+税

中国語繁体字版『笑談日本語』登場!

台湾、香港等で発売中

きゅうしゅ.jpg
ゆとり教育.jpg
パクチー.jpg
わぎゅう.jpg
看板娘.jpg