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瀬戸際

せとぎわ

 瀬戸際とは、生死、勝敗を分かつ重要な局面を意味する。……というようなことが辞書には書いてあるが、こうした定義を聞くと、生きる道や勝つ手段を選択すれば明るい未来が開けるような印象を持つが、実際は「瀬戸際で必死の抵抗を試みた」「連敗して瀬戸際に立たされた」などと使われるように、「ほとんど死にそう」「もうダメ、負けそう」というどうしようもない立ち位置を表現するのに用いられることが多い。私見だが、これには「往生際(死ぬ直前)」や相撲の「土俵際」やのような言い方の影響があるのかもしれない。したがって当辞典流に定義しなおすと、瀬戸際とは、ドジなヤツがしょっちゅう立たされているところ。または、戦争で負けが決定的な軍隊が陣を敷くのにお似合いの場所。

 「瀬戸」と書くのは後世の当て字で、本来は「狭門」。陸地が迫って細くなっている海の部分、つまり海峡を言うが、その中でも鳴門海峡や関門海峡に代表される、幅が狭く、潮流が早く変化が激しいところを「狭門」と呼んでいたらしい(そんな狭門ばっかりの海、またはその海自体が狭門なので「瀬戸内海」と言うんだろうね、たぶん)。こうした「狭門」は船の運航に危険が伴うため、船員たちはその場所にさしかかると(それが「せと〈ぎわ〉」である)、「気い引き締めていけや」みたいな(鳴戸も関門も関西方面だから、そんなかけ声になりそう)気分で難関にのぞんだのだろう。つまり、気を抜くと死ぬ可能性もありうるという、そんな場所が「瀬戸際」なのである。というわけで、クビ寸前に追い込まれたキミの立ち位置も「瀬戸際」という表現で間違いないのだが、瀬戸際は、なんとかその際で踏みこたえるから意味があるのであって、キミみたいに際からこぼれ落ちる可能性が高いケースでは、使うのにちょっとためらいを感じるのである。

(KAGAMI & Co.)

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