どろん、どろんする

どろん、どろんする

 どろんとは、重くよどんださまを表し「どろんとした目付き」などと使う。また、突然姿を消すさまを意味して「金を集めるだけ集めてどろんした」「忍者はどろんと消えた」などと使う。特に動詞化された「どろんする」は、後者の意味で使う。

 酔っ払ってぐだぐだなありさまを表すのに「泥のようだ」などと言うので、重くよどんでいるのを「どろん」というのはなんとなくわかるが、姿を消すのが「どろん」とは、よく考えてみるとあまり素早く消え去るイメージはなくヘンな擬態語である。しかし、われわれは忍者が煙とともに「どろん」と消えてもなんの疑問もなく受け入れている(英語ではどう訳すのだろうか?)。これは歌舞伎などの芝居の下座音楽(BGMですね)から来ていると考えられている。歌舞伎では、幽霊や妖術使いが現れるとき太鼓の低い連打が使われ、それを「どろどろ」「大どろ」「うすどろ」などと言い表しているが、幽霊が消えるときはやや遅いテンポで「どろんどろん」と連打して「消えるぞ、消えるぞ」と期待感を高め、いよいよというときは速いテンポで「どろんどろん」と短く連打して最後の「どろん」で消える。この太鼓の音「どろん」が、忍者や詐欺師の消える「どろん」なのである。幽霊が姿を消すように「どろん」「どろんする」は、突然影も形もなくなるみごとな消滅に使われ、悪いヤツが高飛びして姿を消す様子を表すのにこれ以上ない形容となっているのである。

「泥棒」の「どろ」は、「どろんする」の「どろ」とは関係ないようだが(泥棒の項目参照)、「どろん坊」が語源だと言ってもよさそうに思える(実際は、歌舞伎の太鼓表現より以前に「どろばう」という語はあったようなので、違うのだろうが)。

 (KAGAMI & Co.)

関連用語

  • ​どろどろ