得意先、得意客、お得意さん

とくいさき、とくいきゃく、おとくいさん

 得意先(得意客)とは、商品をよく買ってくれる客、ひいきにしてくれる客。相手が企業の場合は得意先、個人の場合は得意客という場合が多い。いずれにしても、売る側にとっては尊重すべき客なので、尊称をつけて(実際に尊重しているかどうかはともかく)「お得意」「お得意さん」などと言われる。

「得意」という熟語は「意を得る」と読み下すが、「わが意を得たり」などと言うように、自分の考えと一致する、自分の思うままにことが運ぶさまを表しており、そこから、「得意絶頂」のように満足していること、「得意顔(つまりドヤ顔)」のように誇らしげであるさま、「得意技」のようにものごとを思いのままに処理できるさまなどの意味で使われる。

 得意先、得意客の「得意」は、上記の意味からはやや違和感があるが、古くからある使い方で、『枕草子』(83段)に、中宮定子の女官たちがひいきにしている僧形の女芸人の話を聞いた右近内侍(うこんのないし)が「あなたがたのお得意さんでしょうからうちが引き抜くようなことはしませんが、一度見てみたいものだ」と言う場面が出てきて、意味としては現代と同じ。この場合の「得意」は、物語や歌などのサービスを提供される客(女官)の側が満足して何度も呼び寄せる意味合いと受け取れるが、現在の「得意先」「得意客」には、「だまくらかしてファンにしてしまったからもうほっといても大丈夫」みたいな店側の「得意顔(ドヤ顔)」が、または、「あのお客さんをだまくらかすのは得意です」みたいなニュアンスが嗅ぎ取れるのだが、いかがなものだろうか。(VP KAGAMI)

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