関連用語
ケツの毛まで抜かれる
けつのけまでぬかれる
ケツの毛まで抜かれる(一般の辞書では「尻の毛まで抜かれる」)とは、すべての財産を不当に奪われるという意味。多分に俗語的表現であり(言わなくてもわかるっての)、下品な言い方なので(言わなくてもわかるっての)、女性はもとより、常識的な男性もあまり使わない。しかしどうせ下品な言葉なのだから、使うときは、辞書に載っているような「尻の毛まで抜かれる」なんて中途半端な言い方ではなく、思いきって「ケツの毛まで抜かれる」と、より下品な言葉遣いをこころがけたい。青二才が賭博場にまぎれこむと、「幾多の修羅場をくぐりぬけてきたぜ」みたいな年寄りが近づいてきて、「お兄さん、やめときな。ここはお前さのような素人さんが来るところじゃねえ。ケツの毛まで抜かれるぜ」などと諭す場面が、任侠映画などで見られ、見ている人は「親心のある年寄りじゃねえか」などと感心したりする(別に親心でもなんでもなくて。いかにも金を持ってなさそうな若造に、はした金で面倒を起こされるのは迷惑なので、追い返したいだけなのだが……)。
この言葉のもとは「ケツの毛を抜く」であり、だます、たぶらかすという意味。「ケツの毛を数える」とも言うらしい。江戸時代、色街で女郎の色香に迷った男のありさまを「鼻毛を延ばす」と言い、そんな男の心理を読んで女郎が手玉にとることを「鼻毛を読む」「鼻毛を数える」、さらに進んで男をだますようになると「鼻毛を抜く」となる。この「鼻毛」の程度がエスカレートしたのが「ケツの毛(尻の毛)」ではないだろうかと推測する。そりゃあ、鼻毛を数えられたり、抜かれたりするならまだしも、ケツの毛まで抜かれてしまうのは、よほどふぬけになったヤツに違いないが、それについてはこれという証拠資料はなさそうである。
ケツの毛まで抜かれるという言葉について、2021年5月に上記を掲載した。ケツの毛まで抜かれるの「まで」は、頭髪のように簡単に抜ける毛ばかりか、日常生活で表にさらされることのないケツの毛さえ抜かれてしまうという意味で、語源としてはそれで問題ないと思うが、この言葉が登場した江戸時代からすでに、「まで」は体中の毛を全部抜かれて、ケツの毛「まで」という意味合いで使用されていたフシが強い。例えていえば、毛を刈ることを告げられた羊が、「え? ケツの毛まで刈るんですか」と戸惑っている姿を思い浮かべたらよろしかろう。
(VP KAGAMI)