あんちくしょう

あんちくしょう

 あんちくしょうとは、「あの畜生」がなまった言葉。相手をおとしめる「畜生」に、遠称の指示代名詞「あの(あん)」を付けたもの。近称の「この」を付けた「こんちくしょう」がすぐ近くにいる相手に対して吐かれたり、自身の想像のなかで目の前にある対象に向かって毒づいたりする場合に使われるのに対して、「あんちくしょう」は、実際に相手が遠くにいたり、隣家に住んでいても遠くにいることを想定して、「あんちくしょうめ、今度会ったらたたきのめしてやる」のように用いられる。つまり、この例の場合、相手が近くにいたら自分がたたきのめされるに違いないので、安全な場所に飛ばしたうえで、上記の発言とあいなったのである。

 ところで、「あんちくしょう」や「こんちくしょう」はあるが、中称の指示代名詞を使った「そのちくしょう」「そんちくしょう」とは決して言わない。というのは、「その」の場合、「あの」と「この」の中間を指示するという意味以上に、話し手と聞き手の両者に共通認識のある対象を指すという重要な機能があるからだ。つまり、英語のitやtheと同様である(ちょっと違うかも知れないが、まあいいや)。「あの」や「この」が自分だけで閉じて成立するのに対して、「その」は他者との折り合いがついていなければならないので、自分の強い気持ちだけで発せられる「こんちくしょう」や「あんちくしょう」と違い、さあみなさんご一緒に、はい、「そんちくしょう」みたいな、かなり客観的で冷静な表現になってしまい、呪い言葉にはそぐわないのである。(VP KAGAMI)

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