芋、薯、イモ

いも

 芋(薯、藷)とは、植物の根や地下茎が養分を貯えて肥大化したもの。主に食用……というのが大方の辞書の定義だが、根菜と呼ばれるダイコンやニンジンも同様の定義でくくられると思うので、それらと芋の区別がよくわからない(辞典のくせになに言ってんだ、という話だが)。そこで推定も入れて当辞典流に定義しなおせば、「そこそこおいしく食える根っこのうち、ダサい見た目が似通っているもの」(ひどい定義だ)。ジャガイモ、サツマイモ、タロイモ、サトイモ、ヤマモイモなどが日本では知られているが、植物学上の分類ではすべて別のジャンルに属すという、大雑把な名称である。

 食べ物としては、栽培が容易で栄養価も高いところから、主食としている地域もあり、主食につぐ副食や保存食として利用しているところも多い。特に保存食、非常食としてのイモの価値は高く、指導者がジャガイモやサツマイモの栽培を促して、飢饉から人々を救ったという話が西洋にも日本にも残されている。といった事情もあり、イモにはどうしても貧乏な田舎の食い物というイメージが強く残されていて、日本には、イモばかり食べている近所の家族を憐れんだ夫婦が米をめぐんだところ、自分たちの食べるものがなくなって、「しょうがねえ、イモ買ってこい」というオチがつく笑い話がある。西洋でも、ゴッホが若い頃に描いた(といってもけっこう若くして死んじゃったけど)『ジャガイモを食べる人々』にも、ふかしたジャガイモ(湯気たっているからふかしているに違いない)を並べた大皿を囲む農民の姿が描かれている。われわれはそれを見て、「あー、イモ食ってるんだ~」という憐れみと、「でもまあ、談笑して満足そうだしよかったじゃん」という労働への感謝という、ゴッホの狙い通りの感情を抱くのである。

 「いも」は、古くは「うも」と言っていたようで、語源は地下に埋もれているからという説がうなづける。食べてうまいから「うも」かもしれないが、他にうまいものはいくらでもあるし、わざわざこんなのが選ばれるはずはない。

(KAGAMI & Co.)

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