鰹節、カツオブシ

かつおぶし

 鰹節とは、カツオの加工品で、昆布と並ぶ日本料理の出汁用食材の代表格。調理場で包丁を手にした暴漢に襲われたとき、反撃できる唯一の食品。おそらく硬さにおいては世界一の食品である(皿やガラスを食べる人については、そのかぎりではない)。そのため、大工道具のかんなのような器具(というより、かんなそのものの器具)で削って使用する(現在はすでに削られてパックされた製品が多いが……)。日曜大工のついでに料理できる食材は世界広しといえども鰹節くらいのものであろう。

 鰹節の硬さの秘密はカビ。のどが乾いているカビを燻製にしたカツオに何度も付けて水分を吸わせる。完成までに数か月かかるその製法は、「なぜそんなにマニアックなまでに硬くする必要があるのか」という疑問を、製品から採取できる出汁の強いうまみで一発解答してくれる。製造にかける期間に比べて上質な出汁を取る時間はごく短いといういさぎよさと、「勝利するサムライ」とゴロ合わせ解釈できるその名前により、江戸時代には縁起物として尊ばれた。

 鰹節の「カツオ」は魚の名前だが、これは堅(かた)い魚「かたうお」から来ているようだ。カツオは見た目も堅そうではあるが、生で食べる分にはほかの魚と変わらず、豚足みたいに堅くてかみ切れないわけではない。しかし、万葉の昔にはこれを保存性を高めるために干物にしていたので、食膳にのぼるカツオは実際に「堅い魚」だったらしい。

 では、鰹節の「ブシ」はなにか。筆者はこれを竹の節(ふし)のように硬いから「節」なのだと考えていたが、どうやらこれは「干し」つまり「カツオボシ」が変化したものらしい。「鰹節」が文字として登場するのは室町時代だが、それ以前も干して食べていたのに、なんであらためて「干し」を付けたのかよくわからない。そのころはまだカビ付けの製法は使われていなかったが、それでもカツオブシは干物のカツオよりよほど堅くてクレームをつけられたので、「これはカツオブシという食品で、出汁を取るために使い、直接食するには適していません」というような注意書きが付されたのではないだろうか(筆者の想像ですが)。

(KAGAMI & Co.)

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