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名前

なまえ

 名前とは、人や事物を他の人や事物と区別するために付けた記号。人についていう場合は氏名のこと、特に、氏名の名字を除いた部分、英語でいうfirst nameのこと。もっとも、病院で「お名前をお呼びしますのでお待ち下さい」と言われて待っていたからといって、「タカシくん」とか「マリコちゃん」などとは呼ばれず、たいていは「鈴木さん」などと名字で呼ばれるので、氏名における「名前」の位置づけは明確ではない。人間の「名前」は、その人を個人として特定する記号、つまり固有名詞という位置づけなので、病院で呼ばれる場合は「鈴木」が「名前」でよろしい。「鈴木さん」と呼ばれて同姓の鈴木さんがぞろぞろ集まってきたら、あらためて「鈴木一郎さん」と呼べば、他の鈴木さんはすごすご席に戻ることとなり、「鈴木一郎」が「名前」となる。一方、事物においては、「リンゴ」を「果物の名前」と言い表すことがあるが、「リンゴ」はカテゴリーに付せられた記号であり、固有名詞である人間の「名前」とは違う。リンゴは、他の果物やキッチンナイフと区別できれば十分であり、頭のいいゴールデンレトリバーのジョンに「キッチンからリンゴを取って来て」と言えば、ちゃんとリンゴを持ってくる(歯型がついちゃっているとは思うが)。だから「リンゴ」は「名前」の定義に則しているわけで、逆に「リンゴ」に「メアリー」などという固有名詞を付けてしまったら、ジョンはガールフレンドを探しに行ってしまうかもしれず、メアリーを手にしたとしてもそんな名前が付いていたら食いにくくなる。

 日本で「名前」という言葉が使われるようになったのは、江戸時代からのようで、それ以前はただ単に「な(名)」だけだった。「前」は「御前(おまえ)」のような敬称か、「一人前」「分け前」のようにそれに相当する分量や部分を指す語かというところだが、その人に与えられた分け前としての記号というような意味合いで後者が妥当ではないかと考える。(VP KAGAMI)

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