斜め、ななめ

ななめ

 斜め(ななめ)とは、垂直、水平ではなく、傾いていること。また、前後、左右、上下から位置がズレていること。それぞれ「ピサの斜塔がななめに見えるのは気のせいじゃないよ」「あなたのななめ後ろに背後霊が見えます」などと使う。

 ある辞書によると「なのめ」が転じた語とあり、それではと「なのめ」をひくと「ななめの転」とある。え~い、どっちがもとの言葉なんじゃいと言いたくもなるが、「ななめ」は漢文訓読に、「なのめ」は女流文学などの和文に用いられ、主流は「なのめ」だったようだ。その語源についてははっきりしていないが、中に「なな」「なの」は数字の七ではないかとする説が見られる。その心は、漢字の「七」の横棒が斜めになっているから、七つ時は日が傾くころだから、山道で十のうち五、六は峠、七あたりから下り坂にかかるからなどで、どれも冗談みたいな説だが、「七」の横棒が傾いている件は再考の余地がある(実は自説なので、力入ってます)。「七」という漢字を解説している中国最古の部首別漢字辞典『説文解字』(西暦100年頃成立)を注解した1815年の『説文解字注』には「中衺出也」つまり「中より衺(=邪ななめ)に出(いづ)るなり」という文句が見え、これが縦棒の真ん中から斜めに横棒が出ていることを指しているのかどうか私には読み解けない(「七」の元の文字の形は「十」に近く、横棒も傾いていないし)が、何かが斜めである点が着目されていたことはわかる。「七」の横棒傾き説によると(自説のくせにとぼけるんじゃない)、日本では、「ななつ」というものの数え方がまずあり、「七」という漢字が輸入されたとき、その横棒の傾きに注目して「七のように見える」から、傾いていることを「ななめ」「なのめ」と言うようになったのではないかとしている。そうなると、ものの数え方の「ななつ」の語源が気になるが、これについては「ななめ」から来ているとする説もある(つまり「ななめ」の方が先にあった)ので、ここは自説の吹聴だけにとどめておく。

 日本では垂直、水平にきちんと整理されていることが重視され(近世以降はその美意識は崩れたが)、斜めはいい加減、おろそかという意味に、また、縦=正道(インサイダー)、横=邪道(アウトサイダー)、斜め=普通・平凡という位置づけもなされていた。そのため「なのめ」を否定した「なのめならず」という語は普通ではなく飛び抜けているという意味でよく使われ、それを略した「なのめに」も、理屈から言えば「普通」だが、「普通ではない」という意味で使用されていた。

(KAGAMI & Co.)

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