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裂く、割く

さく

 裂くとは、紙や布に反対方向に力を加えて線状に切る行為を言い、「シャツを裂いて止血しようとしたがダメだった」のように使う。この例文の場合ではシャツを帯状に切り離す行為を想定しているが、「裂け目」などと使われるように、切って離すところまで完了しなくても「裂く」という。だから例文の場合、自分でシャツを裂いて止血しようとしたが、裂いている途中で力尽きてしまったとも受け取れる(自分でやってて力尽きてしまったら、この発言はできないのでそれは「なし」かな)。

「破る(やぶる)」も「紙を破る」のように「裂く」と似た行為を指すが、ワルガキが障子にゲンコツで穴を開けることも「破る」というので、「裂く」のように線状の切れ目に限定されない。また「鮭の腹をさいてイクラを取り出した」の場合、「割く」という字を当てることが多い。「裂」と「割」の違いは、「裂く」の場合、線状の切り口に焦点が当てられるのに対して、「割く」では、切って大きく開く(割る)、あるいは切り分ける(分割する)イメージをもとにしていると考えられる。いずれにしても「裂く」なたは「割く」は、「切り離すまたは大きく切り開くことを想定して切る行為」と定義することができそうだ。

「さく」の語源は明らかではない。花が咲くの「咲く」は、つぼみが裂けて花が開くイメージがあり候補にあげてもよさそうだが、現代語でも同じく、奈良時代からアクセントが違い、別系統の言葉だとされている。私見では、「サクサク」といった擬音表現がもとになっているのではと考えるが、まあ、採用されなくても文句は言わない。

​(VP KAGAMI)

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