サクサク、さくさく

さくさく

 サクサクとは、クッキーやソフトなせんべいなどを嚙むときの食感や音、または野菜などを切れ味の鋭い刃物でほとんど抵抗なく切り進む音やその際の感覚を表す擬音語または擬態語。近年では、刃物で食材を切り進む心地よさから、仕事が順調にはかどる様子を表すのに用いられている。つまり、上司に仕事の進み具合を尋ねられた部下が、「気持ちいいくらい順調に進んでいます」とウソをつく場合に「サクサクいってます」と、または上司が部下にめんどうな仕事を丸投げする際に「めんどうな仕事だけどとっとと終わらせてね」という意味で、「サクサクやっちゃって」などと使う。つまり、想像上の快適さを求めてうわっつらでやりとりされる用語である。

「さくさく」と読まれる言葉には、漢語を語源としたいくつかの意味がある。「索索」は風で葉っぱなどがこすれあう音や心が乱れるさま、「嘖嘖」は口々に言いはやすさま、「鑿鑿」はことばたくみなさまを言うが、いずれも現代ではほとんど使われていない。たぶん、漢字が読めないうえに、意味もピンとこないからだと思う(私だけか?)

 日本語の「さくさく」は、鎌倉時代のむかしから、歯切れのよい食物の食感や刃物で食材を切る感触を表現するのに用いられていたが、これは、ものを食べるときの音感を再現したものではないかと筆者は考える。「さくさく」の「さ」は、サ行の歯茎摩擦音と、口を開いて発する「あ」音からなる。歯茎摩擦音は舌の先と歯茎でスキマをつくり、その間に息を通して摩擦させ発する音。これはまさに、多少歯ごたえのある食べ物を嚙むとき、歯と食べ物がこすれあう音の再現である。そして、歯をかみしめてのどを鳴らす「く」音を付けることで、何度も嚙む「さくさく」が表される。刃物で野菜を切る感触も、その音感を受けたものと考えられる。

 いずれにしても、「さくさく」はものごとが抵抗なく進む気持ちのよい感覚で、そのことは昔の人もわかっていたらしく、江戸最初期の『日葡辞書』は、「さくさくと物を言ふ人ぢや」を、「あの人は、機敏に、きっぱりと物を言う人である」と説明している。現在、仕事などがはかどる様子を俗語的に表している「サクサク」だが、昔の人もその気持ちのよさは共有していたようである。

 ちなみに現代中国語の「索索」は、風が木のこずえや枯れた葉をならす音、日本語で言えば「さわさわ」「かさかさ」といった意を表現している。「索」という漢字は、縄つまりロープや、探索の「索」のように探し求めるという意味があるが、「索索」であらわされる木の葉のふれあう音を連想させる意味はない。つまり中国語の「索索」も擬音語として用いられている言葉で、日本語のようにひらがなやカタカナがないから、意味としては通じないこの文字が当てられているではないかと考えられる。日本語読みの「さくさく」という音感には、あまり木の葉がふれあう音のイメージはないが、それもそのはずで、「索」は現代中国語では「suo[第3声](スォア、みたいな読み)」と発音されるので(昔はどう読んでいたのかは知らないが)、「suosuo」なら、「さわさわ」の感じはわかる。枯れ葉を風が騒がせるイメージからか、「索索」には、寒さでぶるぶる震える様子という意味も辞書には載っている。(VP KAGAMI)

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