どろどろ

どろどろ

 どろどろとは、泥状の物質の形容で、「どろどろのソース」「どろどろに溶けた鉄」などと用いる。いずれの例にも共通しているようにこの「どろどろ」は、その物質全体が泥状になっていることが条件と考えられ、怪談話で毒薬を呑まされた被害者の顔が部分的に崩れたような場合は「どろりと溶けた」程度の表現にとどまるだろう。

 また「どろどろ」は、三角関係やさまざまなハラスメントの状況で、その登場人物がいずれも性格の悪いヤツらである場合を「どろどろの人間関係」などと言い表し、以前の「昼メロ(いまはなんと言うのでしょうか? 韓ドラか? 違うか…)」の得意科目であった。この状況の「どろどろ」は感触としてわからないでもなく(少なくとも「さらさら」や「かちんこちん」ではないだろう)、それに「泥まみれ」「顔に泥を塗る」の「泥」そのもののイメージが重なった表現だと言えるだろう。

 古く「どろどろ」は、断続的に聞こえるやかましい音を表し、遠くで響く雷や砲声、太鼓の連打などの音を例えた。幽霊が登場する音を「ひゅー、どろどろ」などと言うのは、いくらその幽霊の顔がどろどろに溶けていたとしても関係なく、歌舞伎の下座音楽の笛と太鼓の音を表している。江戸時代最初期に発行された『日葡辞書』でも、doro doroto(ドロドロト)は「音がひびくさま、または、ひどくやかましい音を立てるさま」だとされている。この辞書の注目点はその次の項目で、doromequ(ドロメク)つまり「ドロドロみたいな音がする」には、「大勢の人が板張りの縁側を通る時などに、やかましい音を立てる」と、ピンポイントすぎる具体的な説明が付されていて、笑える(これはたぶん筆者が屋敷勤めの武士か誰かから聞いた情報だと思われる。こういう違和感のある記述を発見するのが、故・赤瀬川源平氏が教える辞書の楽しみかたです)。一方、dororito(ドロリト)の説明には「蠟などものが溶けるさま」とあり、「どろ」が、擬音語としては遠雷や太鼓の音、擬態語としては泥状のものの表現として、すでにこの時代には使われていたことがわかる。

 (KAGAMI & Co.)

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