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唾、つば、つばき

つば、つばき

 唾(つば、つばき)とは、唾液のこと、または、口から吐かれる唾液。「つば」とも「つばき」とも言うが、もとは「つはき」または「つわき」。つばを吐くという意味の「つばく(唾吐く)」または「つはく」という動詞の連用形が名詞化した語。

 神話世界の日本では、誓いを守る印として唾を吐いたといわれる。まるでケンカを売られたチンピラみたいだが、『日本書紀』では、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が、黄泉の国へ旅立って恐ろしい姿に変身した伊邪那美命(いざなみのみこと)と離婚を決意し、死者なんかに負けないぞ(負けると死者の仲間にされるから……つまり、ゾンビだ)と誓って唾を吐いたとされている。その唾から速玉之男(はやたまのお)という神が生まれ、熊野三山の一、熊野速玉大社でその名が知られるものの、この社の祭神・熊野速玉大神は、伊邪那岐命のことだと同社では主張していて、速玉之男がマイナーな神である感は否めない。

「唾吐く」は、まさに唾を吐くというという意味なので、唾液のことは「つ」と言ったのかもしれないが、文献に見えるのは中世以後で、古代から「唾」は「つはき」「つばき」として記されている。「つ」は、唾を吐くときの擬音語と考えられる。多くの人が唾はペッと吐き出すが、昔のアクション映画などを観ると、悪役がタバコのヤニとともに唾を歯の透き間から吐き出すとき「つっ」と音がするように感じられる。だから、「つばき」は現代風に言い直すなら、「ぺばき」または「ぺば」とするのがよいのかもしれない(よかないよ)。(VP KAGAMI)

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