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愛妻弁当

あいさいべんとう

 愛妻弁当とは、妻が夫のために作る弁当。夫婦仲のよさをアピールした言い方であり、弁当の質は問わない。つまり、市販の惣菜をぶちこんだだけだったり、卵焼きが真っ黒にこげていたりしても、「うまそうだ(市販の惣菜だからうまいに決まってる)」とか「かわいいね(「真っ黒焦げでも、ええい、いれちゃえ」みたいな態度がかわいいというわけですわ)」などとお世辞を言われ、愛妻弁当の地位は揺るがないのである。この言い方は、他人がその弁当の所持者に対して、「いいねえ、毎日愛妻弁当で」というような冷やかし半分の言葉をかけるさいに用いるもので、本人が自分の弁当を「愛妻弁当です」とか「妻がボクのために愛をこめて作ってくれたとてもおいしい弁当です」などと、アメリカ人みたいなことは言わない(バカかと思われる)。また、日本では身内の者を他人に紹介する場合は謙遜して「愚妻(愚かな妻)」「愚息(バカ息子)」などというが、こと弁当に関しては「愚妻弁当」とは決して言わない。つまり、身内本人については謙遜してバカ扱いしても、弁当となると、自慢することもしなければ卑下することもしないというアンタッチャブルな存在と化するのである。

 なお、この種の言葉はフェミニストに目をつけられやすい表現であり(妻は弁当作ってりゃいいのか、みたいな)、世間体を気にするいまどきの人はなるべく使用を控えたほうがいいかもしれない。

 (KAGAMI & Co.)

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