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超絶技巧

ちょうぜつぎこう

 超絶技巧とは、主に音楽の世界で、並みの演奏家にはとても演奏できない難易度の高い演奏技術を言い、フランツ・リストの『超絶技巧練習曲』(誰が「練習」できるんだという)がよく知られている。近年この語は美術の世界に取り込まれて、凝りに凝って他者がまねできない職人技を指すようになっている。特に明治時代、日本の職人のプライドをかけて制作され世界の万国博覧会に出品された陶芸、木彫、牙彫(象牙彫刻)、金工、七宝などの工芸作品に対して、敬意をこめて「超絶技巧」が冠せられる。近年までこれらの作品は、技術の見せびらかしに過ぎず芸術的価値は高くない下手物とみなされ、美術界の趨勢から取り残されて一部の好事家と外国人の愛好品にとどまっていたが、その有無をいわせぬ圧倒的な技術によりこのところ脚光をあびている。果物や野菜そっくりの牙彫や巨大なカニがはりついているといった、いかにも「受け」ねらいの作品が「芸術業界」からきらわれるのはもっともだが、下衆な人々の愛好品が海外からの注目により評価が一変するという現象は、浮世絵や根付を引き合いに出すまでもなく日本の「芸術業界」にありがちなどたばた喜劇ではある。(KAGAMI & Co.)

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