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梅干、ウメボシ

うめぼし

 梅干(ウメボシ)とは、梅の実を塩漬けした後、日光にさらした保存食品。クエン酸を多量に含む果実を塩漬けしているので、必要以上に酸っぱくて塩辛く、納豆などと並んで日本人が外国人に食べさせて反応を見たがる食べ物の代表格となっている。コンビニおにぎりの具材の人気ランキングで、梅干のおにぎりは上位に顔を出さないが、サケ(サケは人気がある)や昆布(梅干よりは人気がある)などと並んでコンビニ具材の絶対定番にいすわっている。つまり、いくら人望がなくても、オレがいちばんの古株だからと牢屋の中で幅を利かせている牢名主みたいな存在が梅干である(かえってわかりにくくなる例えだったかもしれません)。

 梅干は、酸味はともかく塩分が半端ないので、日本人も大量に食べるのは避けていて、納豆をしょう油もかけずに何パックも食べて悦に入っているようなヤツらも、梅干しを山盛りにしてご飯のおかずにするような危険なまねはおかさない。商品として売る方もそのへんは心得ていて、近年は塩分を減らした減塩梅干が主流である。梅干は塩分が少ないと保存性に劣るが、その分は化学的成分をたっぷり使って補塡しているから大丈夫である。

 梅干には殺菌作用があり、少しくらいヘンなものを食べても、胃の中で菌を殺してくれるらしい。そういうわけで戦後の日本人は、防腐作用があるからと、白飯の真ん中に梅干しを置いた日の丸弁当をさかんに作ったが、これは食中毒を心配していたわけではなく、貧乏でおかずが買えなかっただけである。私はかねがね「梅干を入れるとご飯が腐らない」と言われるたびに、「ホントか?」と疑問に思っていたが、実際、ご飯に乗せた梅干は、それが接触している周辺への殺菌効果があるだけで、ご飯全体に行き渡るわけではないそうだ(そりゃそうだろう、殺虫ガスを吹き出しているわけじゃあるまいし)。

「梅干」は梅を干したもの、つまりdry umeである(英語国の人にもumeで通じるらしいですよ。なお、梅干しはumeboshiで通じる〈相手がウメボシというものを知っていればの話だが〉)。見た目は確かにシワシワしていて干物っぽいが、食べてみるとdryどころかwetであり、ドライフルーツのジャンルに入れるのは難しく、名前に疑問が残る。梅干は製造過程において、干した後、もう一度塩漬けしたり、梅酢などで味付けして完成するので、そういうことになるのだが、考えてみれば、「みりん干し」なども食感はベタベタと湿っているので、「干し」という名前にさほどこだわる必要はないのかもしれない(私以外誰もこだわっていないかもしれないが)。

(KAGAMI & Co.)

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