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おつ

 乙とは、「甲乙丙丁(こうおつへいてい)……」と続く十干の二番目で、訓読みでは「きのと(木の弟という意味)」。そこから、順列の二番目として戦前の学校の成績表などで使われ、契約書などの書類で、二番目に登場する人物や組織名の略号として用いられている。また、食べ物や芸能の評価において、「独特である」「風変わりである」「洒落ている」といったニュアンスを含むほめ言葉として「乙だね」などと使う。これも、「一番よい」「最高である」「文句のつけようがない」という評価には当たらないが、いいところがあるという意味合いで、二番目の「乙」という言葉を持ち出したものと思われる。その評価対象をベタぼめしているわけではないところがこの語の使い勝手のよいところなのであって、その昔、「太鼓持ち」「男芸者」などとも呼ばれた幇間(ほうかん)は、きまぐれな客から料理の味を尋ねられると、「うまい」とは言わず、「乙ですな」と答えたという。つまり、なんでもかんでも「うまい」と答えて、料理の味もわからないヤツと見下げられるのを避けるため、「うまい」とも「それほどでもない」とも受け取れる「乙」という言葉に逃げているのである。(KAGAMI & Co.)

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