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大向こうを唸らせる

おおむこうをうならせる

 大向こうを唸らせるとは、芝居で通の客を感心させるという意味。芝居好きをうならせるくらいだから、一般客にも人気だろうというわけで、普通に大人気を博すという意味でも使われる。

「大向こう」は、芝居小屋で舞台から見て正面一番後方に位置する一幕見の立ち見席のことをいう。現代の歌舞伎の劇場でも、後方最上階に一幕見の席があるがさすがに立ち見ではなくちゃんと椅子に座って観劇できる。ただ、天井に頭がつくほどの場所にあるので「天井桟敷」などという言い方をする。一幕見の大向こうには、貧乏なのでいい席は取れないが、クライマックスや好きな役者が活躍する幕だけでも見たいという芝居好きが集まる。彼らは、招待された桟敷席でキャーキャー騒いでいる客(アイドルの舞台じゃないから、そんなに騒がないが)と違って、かけ声にも気合いが入っていようという客であり、彼らをうならせるくらいだからよほどの名演であったということがわかる。

「大向こうを唸らせる」は、「大向こうを唸らせる出来映えの作品」のように、批評家や通の客をも感心させるという意味で使われることもあるが、「大向こうを唸らせる演技」のように演劇関係の使用法が最もしっくりくる言葉である。つまりこの言葉は、大向こうの客がうなって感心しているのが舞台上の演技者や舞台袖の関係者に伝わってくるという、現場のヒリヒリした雰囲気を伝えているのだと考えられる。

(KAGAMI & Co.)

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