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関連用語
鼻白む、鼻じろむ
はなじろむ
鼻白むとは、臆する、気後れする、興ざめする、不愉快な気持ちになる、そのような表情を見せるという意味。それほど使われていない言葉だが、『源氏物語』にも、臆する、つまりビビるという意味で使われている。直訳すると「鼻が白っぽくなる」ということだが、その「現象?」の意味がまったくわからないので、使われ方も当初の「気後れする」からいろいろな方向に発展してしまったのではないかと推察する。誰にもわからないのをいいことに、江戸時代の辞書では「人が臆した時は必ず鼻の上が白く見えるところから」と、言えばいいってもんじゃないという解説がなされている。白くなる、白っぽくなるという意の「白む(しろむ)」は、臆する、ひるむ、たじろぐという意味もあるが、使われ始めたのは中世以降のようで、「鼻白む」のほうがむしろ先にあったのではないかとも思える。同じく白くなる、白っぽくなるという意の「白ける」は、現在使われているような、興ざめする、気まずくなるという意味で、中世ごろから使用されているので、そのあたりに影響されて「鼻白む」も意味合いが広がったのかもしれない。それにしても、「白ける」の場合、色あせたり、色がさめたりするところから、興ざめする、気まずくなるという連想は理解できるが、「白む」と臆する、ひるむ、たじろぐの関連は疑問が残る。こうなると、「し」と「ひ」の区別がつかない江戸っ子ではないが、「白む」と「ひるむ」が通じあったなどという説を思い浮かべる輩があったとしても不思議はない。
ところで「鼻白む」は、「はなしらむ」「はなじらむ」と読むこともあるが、過去の用例は少ない。「鼻白む」を、「白ける」の意味で使うようになった昨今の発音の仕方ではないかと考える。
(VP KAGAMI)