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粥、おかゆ

かゆ、おかゆ

 粥(かゆ)とは、通常の炊飯より多量の水で米を軟らかく炊いたもの、または冷飯を炊き直したもの。ていねいに「おかゆ」と呼ばれることが多い。日本では病人の食い物として認定されているので、健康な人がお粥なんか食べていると「大丈夫か」と心配される。

「粥」は本来は米を水で炊いたもの全般を意味し、古くは、現在のお粥は「汁粥(しるがゆ)」、現在のご飯は「堅粥(かたがゆ)」と言っていたようである。「粥」という漢字は、日本の音読みでは「シュク」、中国語の発音はZhōuで「ヂョウ」のように聞こえる。「米」と「弜(キョウ)」からなり、「弜」は炊いたご飯から湯気が立っている様子を表しているのだという。なかなかかわいらしい成り立ちの漢字で、炊きたてのご飯を表すには最適の字だと思うが、病人食として定着してしまったいまとなっては、私が騒いだところでどうしようもない。

 現在日本で食べられている粥は、濃い味のスープで炊く「おじや」との違いをはっきりさせたいとでもいうのか、あるいは「粥」はあくまで「飯」の延長線上にあるもので味付けするのは邪道だという考え方があるのか、せいぜい塩を振った程度の淡白な味で饗されるのが普通であり、梅干しやぬか漬けなどお新香と一緒に食すのを常としている。ご飯に比べて満腹感がなく、味付けも物足りないが、消化がよく体も温まるので、日本では病み上がりの病人が食べるものだという印象が強く、日常的にはあまり食されない。ただ最近は、朝飯に粥を食べる中国系の文化の影響で、以前よりは市場に出回っている(それでも中国人のようにお粥に揚げパンを合わせて食べたりはしない)。 

 江戸時代、京都・大坂地方では、特に冬季の朝食にお粥を食べる習慣があったようだが、江戸後期の風俗エッセイスト・喜多川守貞は、著書『守貞漫稿(もりさだまんこう)』(明治時代に『類従近世風俗志』として刊行)の中で、「江戸っ子は京・大坂の連中が朝粥を食べるのは(米が節約できて)ケチだからだと言っているが、京坂は夕食前に炊飯するので、朝方冷えた飯を熱々の粥にして食べる習慣があるのだ」と弁護している(とはいえ、京・大坂の人々がケチであるという指摘に対する弁護にはあまりなっていない)。

(KAGAMI & Co.)

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