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板前

いたまえ

 板前とは、日本料理の料理人のこと。まな板の前に立っている(もちろんただ立っているわけではなく、料理をしている)から板前という。関西方面では「板場(いたば)」とも言い、庖丁一本さらしに巻いて修行に出かけたりする(流行歌の歌詞。知っている人はかなりの高齢者)。つまり日本料理ではまな板での調理が料理人の主要業務であり見せ場なのであり、だから日本料理店では、カウンターの向こうで庖丁さばきを見せたがる料理人が多いのである。

 英語のcookは火を使う料理から来ており、中国語では「庖丁」を昔は料理人の意味で使っていたが、現代では「厨師(キッチンにいる専門家)」「炊事員(炊事つまり煮炊きする係の人)」などが用いられているようで、海外では料理人の主要業務は火を使う料理なのだといえる(中国料理なんか特にそうですね)。

 日本料理では「ただ切っただけ」みたいな料理も多く(ほんとはたいへんな手間がかかってるんだよね。わかってますって)、まな板での調理が主役になるのはやむをえないわけだ。火を使う調理はなかなか人に見せにくく、どうしてもキッチンの奥の方で汗だくになって鍋を振るっている姿が目に浮かぶ。日本料理の見せたがりをうまいこと海外で商売に取り入れたのが、鉄板焼きパフォーマンスではなかろうか。庖丁さばきを見せたがる料理人の中には、能書きをたれて客をこばかにするいやなヤツもあり、客が頭に来て「おまえなんかやめちまえ」と言うと、「主人がここにいたまえと言ってます」と返すのは、8代目橘家圓蔵の子ネタ。(KAGAMI & Co.)

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