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御構いなく、お構いなく

おかまいなく

 お構いなくとは、どうぞお気遣いのないようにという意味で、家を訪問したとき相手から「お茶漬けでもいかが?(これは昔の京都の人々のあいさつ程度の言葉)」などと誘いを受けたとき、「そんなことはしなくていい」という意味で返す言葉。「お茶漬けでもいかが?」と言ったからといって、相手はお茶漬けなんか出す気はさらさらなく、「お構いなく」と断ったからといって、当方も何か出してくれるんなら遠慮なくいただく気は満々なのだが、お互いウソの気遣いを真に受ける演技をすることによって、良好な関係が保たれるという日本ならではのコミュニケーションが成立している。

 お構いなくの「構い」は「構ふ(構う)」の連用形。「構う」は「構える」の自動詞形で、構造物を組み立てるという意味が原義。そこから「身構える」「心構え」のように、相手の出方や周囲の状況に対応するために、ある姿勢や態度を取る(しっかり組み立てて準備する)という意味が派生した。「構える」は他動詞形なので、自動詞の「構う」になると、当方でしっかり準備して相手にアプローチするという、おもてなしする、世話をするなどの意味となり、そこからさらに、深い関心や準備もなくただ相手と接触を持とうとする、からかう、余計な世話をするといった意味に広がっていったものと考えられる。「おかまいなく」は、相手が過剰な気づかいの負担を減らすために(こっちも負担になるから)用いられ、ほとんど同じ意味だが「おれに構うな」と言った場合は、おれと関係を持とうとするなと突っぱねる意味となる。(VP KAGAMI)

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