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伺う、うかがう

うかがう

 伺う(うかがう)とは「聞く」「尋ねる」の謙譲語。同じ「うかがう」でも、「窺う」と書くと、相手に気づかれないように相手の様子や気持ちを探る、つまり「スパイする」という意味になるが、「うかがう」の意味としてはこちらが先だそうだ。のぞき見するために穴を開ける行為を、穴を「穿つ(うがつ)」と言うが、相手の心をのぞき見する意味の「うかがう」は、その「うがつ」と同根ではないかと、冗談抜きで考えられている。

 身分の高い人が何を考えているのか知りたいと思っても「これって、どうよ」などと面と向かって聞くのはおそれおおく、結局、ビビりながらスパイするように相手の心持ちを聞いたり、尋ねたりすることになるので、「窺う」が、聞く、尋ねる意味の「伺う」につながったのではないかと推測する。

「伺う」はまた、「訪問する」の謙譲語でもあるが、人の家を訪問してその人の暮らし向きをこっそり探り、自分と同じ貧乏暮らしをしているのを確認してほっと安心する……というようないじわるな意味はなく、「問う」や「尋ねる」に「ある用向きのためにその人の家を訪問する」あるいは「道を尋ね尋ねその人の家に行く」といった用法があることから、「伺う」にも「訪問する」の意味が付与されたのではないだろうか。

 さらに、落語家が舞台で芸を披露することを「ご機嫌を伺う」と言うが、こちらは、自分の話が観客に受けているのかどうか、客のご機嫌がよいのかどうか、探りながら噺をしている臆病な芸人のありさまが想像できておもしろい。(KAGAMI & Co.)

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