top of page

恐れ入ります

おそれいります

 恐れ入りますとは、すっかりおびえていますという意味だが、幽霊に出くわしたときの挨拶ではなく、目上の人への感謝の気持ちを表す言葉である。相手より自分の価値を低く設定するという日本の「謙遜(けんそん)」のシステムにおいて、目上の相手から好意を受けたときは、「価値の低い私なんかにそこまでしていただくなんて、ありがたさのあまりおびえています」という意をこめて、「恐れ入ります」と言う。だからといって、「後からどんな返済を要求されるのかわからない」とおびえているわけではなく、単に相手の尊さと威光に打たれてどう対処したらよいかわからないという感情を表現しているのである。おびえて身が縮み上がるほどだという意味の「恐縮」も、同様に「まことに恐縮です」などと用いる。

 また、目上の相手になにかものを頼むとき、「恐れ入りますが」と前置きして「こちらにお名前をご記入ください」などと続ける。名前を書かせるくらいのことでそんなにおびえなくてもと思われるが、そのくらい大げさに相手をヨイショしておけばコミュニケーションは良好に保てるという計算がウラでは働いているのである。(KAGAMI & Co.)

bottom of page