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おん

 恩とは、人に与える施し、恵み、いつくしみなどのサービスを意味する。「親の恩」「仏の恩」などといわれるように通常は無料、すなわち無償のサービスだが、なんらかの狙いがあって他人に施すサービスは「恩を売る」といい、有料。売られた「恩」の返済は、後払いではあるものの、非常に高利であることが多く、長期の支払いに苦労させられるはめになる。もっとも、「親の恩」のように無料であっても、恩を施されたほうは有料と感じなければならず、返済のために一生かけなければならないという社会的雰囲気が以前には強くあった。言うなれば、「恩」というプレゼントをもらって(タダでもらったつもりになって)包装紙を開くと、中から出てくるのは「浮世の義理」という商品とローン払いの請求書なのである。このローンは返さなければ身ぐるみはがされるというほどのものではないが、人間関係がぎくしゃくしたり、社会生活に支障が生じる結果を招く。まるで送りつけ商法の詐欺みたいな行為が、「恩を売る」ということの実態である。(注:すみません、ちょっと言い過ぎました)

 また、自分が施しをしたことを世間に広く喧伝したい場合は「恩を着せる」という。着せられた側は似合ってもいない服を与えられていくぶん迷惑ではあるものの、「ただだからまあいいか」と割り切って施しに感謝し、相手が偉そうにしているのを黙認し、その人の宣伝媒体になってあげればよい(いわば通信販売の商品の「ご購入者様の声」のように)だけなので、恩を「売られる」よりは気が楽である。(KAGAMI & Co.)

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