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おでん

おでん

 おでんとは、大根、コンニャク、さつまあげ、卵、牛すじなどさまざまな材料をだし汁で煮込んだ料理。主に関東方面の呼び名で、関西では「関東炊き」と言う。関西の「おでん」に当たるのは「田楽」で、串にさした焼豆腐、厚揚げ、生麩、ナスなどに甘い味噌を塗った食べ物。関東でも古くはこの形式の食べ物を「田楽」または「おでん」と呼んでいた。「おでん」は「田楽」の略に「お」を付けて丁寧にした語だから、「おでん」という言葉の正確な使い方という点で勝負すれば、関西の勝ち。実際、数十年前まで関東でも、現在のおでんも「おでん」、串にコンニャクを刺して甘い味噌をたっぷり塗って食べる子どもだましの食べ物(作者の偏見ですが、実際、自転車に乗った怪しい商人が子どもにこういうものを売りつけていた)も「おでん」と呼ばれていて、だれも不思議に思わなかった。また、マンガ雑誌で育った人々にとって「おでん」と言えば、赤塚不二夫のマンガ「おそ松くん」の登場人物チビ太が手にしていた、△○□の食材を串にさした食べ物が想起される。作者によれば、△はコンニャク、○はがんもどき、□はなるとだそうだが、当時の貧乏な子どもにとってはちょっとぜいたくなおでんである(たぶん赤塚先生が好きなおでんの具なのだろう)。この△○□は、食材をだし汁で煮込んだもの(たぶん)で、味噌をつけている様子はないので、串に刺してある以外は現在の(関東の)おでんに近いものである。江戸時代の初期、田楽は串に刺した焼豆腐やコンニャクに味噌を塗ったものだったが、これが菜飯(大根の葉などの炊き込みご飯)の副菜として付く定食「菜飯田楽」が有名になったことから、味噌田楽のかわりに各種食材をカツオ出汁、醤油、砂糖などで煮込んだおかずが提供されるようになり、それも「田楽」または「おでん」と呼ばれたようである。たぶん、当時の人も味噌田楽では菜飯に合わないと感じたのではないかと思われ、それには作者も同意する。しかし現在のおでんは、ご飯のおかずとしてもいまいち合わず(個人の感想ですが、おでん定食って、あまり見かけないからな)、酒の肴の部類に属するのではないかと考えられる。

 この新しいおでんを、たっぷりのだし汁で煮込み、汁と一緒に提供する現在のスタイルで売りだしたのが東京・本郷にあった『呑喜(のんき)』というおでん屋で、明治20年のことという。この店はつい最近まで存続し、江戸風の甘じょっぱい出汁のおでんとおでんの出汁で煮込んだ締めの茶飯が名物だったそうだ。いまは「呑喜(のんき)」なスタイルが標準となり、コンビニおでんもチビ太好みのスタイルでは販売されていない。

 (KAGAMI & Co.)

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