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家畜

かちく

 家畜とは、人間が生活に役立てるために飼育する動物のこと。いくつかの辞書によると、牛、馬、豚、鶏、羊、犬などがそれに当たるが、ここに猫が入っていない点が注目される。辞書の編集者によると、猫は「生活に役立てる」という家畜の定義にどうしても入れにくかったのだろう。

 ところで、「生活に役立てる」家畜には「食用」という「用途」も含まれ、豚などはこれのためにしか飼育のされようがない。江戸時代、日本人は家畜は食べないのが原則で、牛や馬、ニワトリなども食用に飼育していたわけではない。だから、飼っていて食欲しかわかない豚は飼育されていなかった。しかし、牛馬の皮を使った衣服や服飾品、武具などの需要は常にあったので、そのための牛馬を解体する職業も存続し、生き物を殺すケガれた職業というので古代から卑賤視されていた。この人たちはおそらく、牛馬の皮を使うばかりでなく、その肉をありがたく食していたはずで、それによりさらに差別を助長し、差別する側の肉食への嫌悪感をなおいっそう高めたものと想像される。

 海外では、馬の肉はあまり食べないが、これは馬が労働力として人間の生活にとけこんでいるから。カウボーイは「牛男」と称しているくせに牛は食うが、労働力である馬は食わない。そのあたりの事情は、競馬の従事者が馬肉は食べないのと同様で、江戸時代の牛馬の位置づけも同じことだが、これにケガれの思想が加わって、「食うために生き物を飼ってるんじゃねえ」という独特の日本的感性が形成されたのだと考えられる。(KAGAMI & Co.)

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