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鎮魂歌

ちんこんか

 鎮魂歌とは、死者の魂を鎮めるための歌。器楽の演奏のみであれば「鎮魂曲」となる。……と言っても、ピンと来ないかもしれないが、西洋では葬儀やミサで歌われるレクイエムがそれに当たり、現代で言えば『千の風になって』あたりがそんな風情を漂わせた歌と言えるだろうか(もっとも、この歌は死者が自分の魂を鎮めているような内容なので、「自鎮歌」とでもいったところか。というか、逆に騒がしい生者を「墓に来てぎゃーぎゃー騒ぐな、うっせえわ!」と鎮める歌か)。

 日本の鎮魂歌は、鎮魂祭(たましずめのまつり)の中で演奏される曲のこと。雅楽の「神楽」や「東遊(あずまあそび)」など、神道系の曲は、ほとんどが「鎮魂歌」ではないかと考えられている。日本の鎮魂祭は、遊離しようとする生者の魂を引き留めてもとの体に収めるという、簡単に言えば病気平癒を目的としたものであり、西洋の「鎮魂」とは趣旨が違う。そのため、鎮魂祭には魂を元気づける「たまふり」の要素もあり、西洋のミサみたいに湿っぽい雰囲気ではないようだ。「鎮魂歌」の読み「ちんこんか」は「キンコンカン」みたいで(下がかった連想はこの際よしなさい)、とても魂を鎮める(静める)音の響きではないが(漢語の読みだからしかたないんだけど)、西洋のレクイエムではなく、日本の伝統的な鎮魂の儀式を思えばそれでよいのだとも思える。

 (KAGAMI & Co.)

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