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凭れる、靠れる、もたれる

もたれる

 凭れる(もたれる)とは、寄りかかるという意味。立ったり座ったりしているとき、体を壁などに預ける(体重の幾分かを受け持たせる)体勢を言う。椅子などは「背もたれ」という「もたれられ」専門の部位があるくらいで、人間が生きていくうえで「もたれる」のは重要な行為だと言える(それほどのものでもないか)。

「もたれる」は「持たれる」から来ていると見られ、先ほど「体重の幾分かを受け持たせる」と言ったが、「壁にもたれる」場合、体重の幾分かを受け「持っている」のは「壁」ということになる。壁に寄りかかっている人は、自分の意思で壁に体重を預けているのだから、「持たせる」と言ったほうが適切ではないかと思え、実際、物を壁に寄りかからせることは「持たせかける」などと言う。「もたれる」は、もたれている人にとっては受け身形であり、壁がボランティア精神で体重を支えてあげているみたいな言い方となるが、これは、もたれている人の精神状態を考えるとわからないでもない。つまり、疲労困憊していて、頼りになるのは壁だけみたいな気持ちで壁に寄りかかっている場合、壁に「持ってもらっている」感が強いというわけである。

 漢字には「凭」「靠」の二つがあり、どちらも、もたれる、頼るという意味で使われる。ただ「凭」は、「化け物に取り憑かれる」の「憑」と同じ意味の漢字なのだそうで、「(頼った相手の)思うがままにされる」という「もたれ感」が強い言い方のようだ。先ほど出た背もたれは、中国語では「靠背(カオペイ)」という。「靠」も宗教的な意味のある漢字らしいが(罪の告白みたいだよね。たぶんそれとは違うけど)、重すぎる「凭」と比べると、「ちょいもたれ」程度のもたれ感である。

 食べ物がなかなか消化されず胃のあたりが重くて不快な状態を「もたれる」という。これについては詳しく調べていないが、胃壁に食べ物がもたれかかってなかなか腸に送り込まれない感覚を言い表しているのではないだろうか。この表現は日本語独特のものらしいが、確かに漢字で「凭(憑)」などと書くと、ミニエイリアンが胃の中でもぞもぞしていそうで、気色が悪いかもしれない。

(KAGAMI & Co.)

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