辛い、からい

からい

 辛い(からい)とは、舌などの痛覚を刺激される味(というか痛み)を表現した言葉。舌「など」と言ったのは、唐辛子は舌を刺激しているが、ワサビやカラシは鼻腔を刺激して感じられる辛みだから。このように唐辛子とワサビ、カラシは別種の辛さなのだが、同じ「からい」を使っているのは、味にうるさい日本人としては不満が残る。せめて「唐がらい」「七味からい」とか「ワサビからい」「なみだからい(なみだは寿司屋の符帳)」などと言い表したらどうかと思う(誰も言わねえか……)。

「からい(からし)」という味覚表現は古くはしょっぱさを言い表したようで、『万葉集』にそんな歌があり、いまでも「塩からい」という言い方をする。語源は「気いらし(けいらし)」つまり「気分がいらいらする」だと『大言海』は述べているが、要するに、舌が刺激されていやな気分だということ。塩のしょっぱさがいやな気分だというのは「ん?」とも思うが、「辛い」を「つらい」とも読むように、「からい」は古くから「からき目をみる(つらい目にあう)」のように、厳しいとか苦しいという使われ方をしているので、塩の評価については「気いらし」でよいのかもしれない。ただし「からし」については、「枯らし」つまり「植物を枯れさせること」から来ているという説もあり、そのほうがノドがからからになる塩の表現には適しているし、言葉のつながりとしても自然である。「つらい」という感覚も、その「枯らし」から来ていると考えれば納得がいく。いずれにしても「からい」は、その後マジでからい唐辛子などが出てきて、そちらを表現する言葉となり、塩の方は「しょっぱい(塩っぽい)」と、やる気のない言い方にとってかわられたのである。

 辛いという表現は、英語では“hot”、中国語では「辣」で、いずれも唐辛子類の辛みにも、ワサビやカラシの辛みにも用いる。英語の場合、唐辛子のほうは確かに「熱い」辛さであるものの、ワサビの辛みはhotというよりcoolであり、やはりワサビの辛さは“tearful(涙を誘う)”などと言いかえたらどうだろうか(言わねえか……)。漢語の「辣」は、「朿(トゲ)」を使っているように正しく痛みの味であることを表現しておりさすがと言えるが、ネットの辞書では、唐辛子とワサビ類の「辣」は別種の辣であると解説されている。中国語でもやはりワサビの方は「鼻辣」「涙辣」などと言い表したらどうかと思う(余計なお世話だな)。

 (KAGAMI & Co.)

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