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この辞典の使い方(ホーム)「え」で始まる言葉>えいえいおうの意味

カテゴリー:挨拶語、感謝、謝罪等の言葉

カテゴリー:政治、軍事

えいえいおう

えいえいおう

 えいえいおうとは、戦場で士気高揚、戦勝の歓呼のためにあげる鬨(とき)の声の一種。多人数がいっせいに気合いを入れたり、歓喜の声をあげるときの合言葉であり、要するに「いち、にい、さん、ダァーッ」みたいなものである(ちょっと違うか)。

 源平の戦いのころにはすでに戦場で兵士達が鬨の声を挙げたことが記されているが、どんな言葉だったのかはよくわかっていない。室町時代後期になって武将・多賀高忠の『軍陣聞書』が「軍陣にて鬨の声を上る事,初めは大将などのえいえいと言へば,続の者おうと永く言うべし。三度程も上ぐべし」と書いているが、戦国時代にはそんな言い方が定着していたと考えられる。多賀さんの言うことを信じるなら、「えいえいおう」はコール・アンド・レスポンスであり、古くから「えい」は力を入れたり、相手を呼びつけたりするときの掛け声であるから、複数人に「えいえい」と呼びかけ、呼びかけられた者どもが「おう」と応えると解釈するのが自然かと思われる。しかし、ネットを調べてみると、大江家、多田源氏に平安時代から伝わり、戦国時代の兵法家・上泉信綱が伝授されたという『訓閲集』巻十「実検」帰陣祝いに「勝凱をつくることは、軍神を送り返し、奉る声なり」とあり、さらに、「えいえいおう」は、大将が「曳(えい)」と叫ぶと、兵卒らが「叡王(えいおう)」と応えることから来たのだと記されているサイトがある。原書を調べていないので(それだけのために高価な本を買う気にならない)どこまでが実際に『訓閲集』に書かれているのかわからないが、「曳叡王」という眉唾物の説について調べてみた。まず「曳」だが、これは引くという意味で、「曳曳」と続けると、旗などが風にたなびくありさまを示す擬態語となり、そこからのびやかによく通る声を表すのに「曳曳たる御声」などと古くから文献に載っている。呼びかけや気勢を上げるときの言葉としての「曳曳」は当て字だが『源平盛衰記』に「曳々とぞ呼びたりける」と記されているので、これはよいとしても問題は「叡王」。「叡王(えいおう)」を調べると、一般的な辞書でもネットでも、将棋の叡王戦しか出てこない。おまけに中国や台湾のネットでも日本の「叡王戦」が出てくるから、中国語でもあまり普及している言葉ではなさそうだ。「叡」は叡智の叡で、聡明であるという意味。したがって「叡王」という熟語があってもよさそうだが、使用例が見当たらない。そこで「叡王戦」の名称のいわれを調べると、主催者が名称を公募して選ばれた名称とのこと。「あれっ?」っていう感じだが、こりゃあもう、『訓閲集』にちゃんと当たってみるか、命名した応募者に聞いて見るしか語源を調べる手はなさそうだ。

​(VP KAGAMI)