あ゛ー、あ゛ーっ

あー、あーっ

 最近、テレビ番組のテロップで、「あ」に「゛(濁点)」をつけて、痛みなどによる悲鳴を表しているのを見かける。例えば、足つぼマッサージを受けた芸人が痛みのために発する悲鳴である。観察すると、痛みに苦しむ芸人は「あーっ」に近い声を出しているが、純粋な「あ」ではなく、確かに濁音が混じっているように聞こえる。これはたぶん、ノドの出口あたりを空気で摩擦して発する声である。人が発する悲鳴は、普通「ぎゃー」とか「きゃー」で表すが、では「ぎゃー」と「あ゛ー」の違いはどこにあるのか。

「き」や「ぎ」は軟口蓋破裂音といって、舌の奥と口腔の奥(軟口蓋)をいったん合わせ、思い切り開いて発せられる音で、「破裂音」というくらいだからかなり大きな音が出る。「あ゛」は、呼気がノドのあたりを摩擦するので、摩擦もなく素直に発せられる「あ」より大きな音は出るものの、「破裂」してしまう「ぎゃ」よりは音は小さい。

 人は命の危機を感じるほどの痛みや恐怖を感じたとき、その危機感を、できるだけたくさんの人に、またできるだけ遠くにいる人にまで知らせるために最大の悲鳴を上げる。つまり「きゃー」とか「ぎゃー」である。これに対して「あ゛-」は、それほど多くの人や遠方の人に届かなくてもいい悲鳴だと考えられる。例えば、足つぼマッサージを受けている芸人は、それが強い痛みをともなうことを知らされていて覚悟ができているし、しょせんテレビ番組の企画であるからどんなに痛くても命まで取られることはないとわかっている。だから、必死の「ぎゃー」ではなく、それほど大きな音を出さなくてもいい「あ゛ー」にとどまるわけだ。つまり「あ゛-」は、結末がわかっている「やらせの悲鳴」なのである。また、こうも考えられる。足つぼマッサージを受けて最初は気持ちがいいので「あーっ」と快感の声を出しているが、徐々に痛みが増して「あー」が「あ゛-」に変化するのだと。

 (KAGAMI & Co.)

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